Wikitude 9.2から新しい3Dモデルトラッキングが導入されました。3Dモデルトラッキングは、従来の写真ベースの3Dトラッキングに3Dモデルもトラッキングデータとして使用することで、認識や追跡の性能を飛躍的に向上させる技術です。現在ベータ版として提供されているこの技術を検証してみました。
ベータ版を使用するにはWikitude社への申請が必要です。また、3Dモデルや写真も提供する必要があります。
トラッキングデータの作成
従来のオブジェクトトラッキングは、対象となる物体の周囲の写真を撮影してWikitude Studioで点群データ(WTOファイル)に変換することで、トラッキングデータを作成します。例えば、今回の検証に用いたMini Cooperの模型を撮影した写真と、生成された点群データは次のようになります。

図1 オブジェクトトラッキング用撮影データ

図2 Wikitude Studioで作成した点群データ(3Dモデルトラッキング用ではありません)
3Dモデルトラッキングでは、撮影データに加えて、3Dモデルデータ(OBJ形式)も使用します。

図3 3Dモデル
現時点では、撮影した写真データと3DモデルをWikitude社に送ると、新しい3Dモデルトラッキング用のWTOファイルが送られてくるようになっています(Wikitude Studioでは作成できません)。作成に当たってWikitude社でデータの検証が行われており、必要に応じて追加の写真(特定の角度から撮った写真)を送る場合もあります。
※3Dモデルトラッキング用のWTOファイルは、従来のWTOファイルと互換性はありません
従来のオブジェクトトラッキングと新しい3Dモデルトラッキングの特徴をまとめると次のようになります。今後はそれぞれの利点を活かして使い分けられるようになると思われます。
従来のオブジェクトトラッキング | 3Dモデルトラッキング |
スマホで撮影するだけなので手軽 | 3Dモデルがあるため精確なトラッキングが可能 |
3Dモデルがなくても可能 | 色が異なるオブジェクトにも対応 |
金属反射や均一な面は苦手 | 特徴的なテクスチャのない部分にも対応 |
周囲の環境に影響されやすい | 周囲の光の変化に強い |
大きなシーンにも対応 | 3Dモデル化されないと対応は難しい |
アプリへの実装
3Dモデルトラッキングが可能なWikitudeのバージョンは、Wikitude Expert Edition 9.2以降になります。Professional Editionでは使用できません。
比較動画
従来の写真だけを使用したオブジェクトトラッキングと、新しい3Dモデルトラッキングを使用したアプリを作成してトラッキング性能を比較してみます。
従来のオブジェクトトラッキング
激しく動かすとロストしやすいためゆっくりめに動かしています。写真データが影響しているのか左側面ではロストしやすくなっています。
3Dモデルトラッキング
比較のため端末を大きく動かしています。これだけ動かしてもトラッキングし続けることが可能です。
まとめ
Wikitude SDK 9.2でベータ提供が始まった3Dモデルトラッキングを試しました。従来のオブジェクトトラッキングに比べてトラッキング性能が非常に向上しているのが確認できました。
現状はベータ版のため、WTOデータ(トラッキング用データ)の作成にはWikitude社へ写真やモデルデータを送る必要がありますが、今後手軽にWTOデータを作成できるようになることを期待します。
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